≪動作原理の歴史≫

いったいいつから地球は回り始めたんだろう?



はじめに

戦後コンピューターがこれほど目覚ましい発展をした中で、オーディオ界はデジタル化で一時的には革新があったものの、スピーカーだけはそれほど決定的に大きな変革があった訳ではなく来ていましたが、ようやく最近になってこの状況に変化が起きようとしているようです。

その中で、現在の主流であるダイナミックスイピーカー(ボイスコイルスピーカー)へ至るまでのスピーカーの動作原理の変遷を見直してみるのは、次の世代のスピーカーを考えるうえで大きなヒントになるでしょう。

さて、スピーカーの働きが、音の信号データを人が聞こえる音として再生する道具、としてみると、蓄音機のサウンドボックスや電話も同じなので、これらもスピーカーとして加えるといたします。
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スピーカー以前 〜 オルゴール

音楽を生だけでなくいつでも好きな時に聴く事が出来るオルゴールは、オーディオシステムの、音の信号データ(レコードの溝、オルゴールのピンの場所)を発信体(スピーカーの振動板、オルゴールの櫛歯)で音を出すというシステムの基本構造は同じです。スピーカーの動作原理の歴史オルゴール
オルゴールが音を出す為には、音を出す為の主要なパーツ、ドラム→ピン→櫛歯→櫛歯台→本体、のそれぞれが振動が伝わる順に接続されていて、「ループ接続振動発生システム」を形成しています。そして、実際に音を出すきっかけになるピンと櫛歯とは点で引っかいたり外したりして効果的に音を出す「点接続の原理」で動作しています。この、「ループ接続振動発生システム」と「点接続の原理」は効果的に、自然界で物体が音が出す原理と同じタワミ振動を人工的に発生させるのに有効な手段なので、スピーカーに関してはこれ以降、この二つの効果は色々な形態で実施されていきます。

ループ接続振動発生システムとは? クリック→
点接続の原理とは? クリック→
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蓄音機のサウンドボックスは機械的点駆動スピーカー

機械が音楽を再生する蓄音機はエジソンによって発明されました。音を出す機構は針が溝をなぞって起きた振動をそのまま振動板の中央の点に伝えて駆動し、タワミ振動で動作する、機械的点駆動スピーカーでした。蓄音機は機械的点駆動スピーカー
エジソンの振動板ただし、エジソンが実際に発明したのは溝の深さをトレースする機構でした。又、振動板の材質は雲母で中央は紐で引っ張って駆動する形態で、トレースする構造はとても複雑で、徐々に横にトレースする構造のサウンドボックスの方が主流になって行きましたが、この経緯はとてもドラマチックな、エジソンの深さのトレースか、ビクターの横のトレースかの主導権争いがあったようです。

さてその蓄音機時代の最後に現れたのが1924年から1925年の1年間のみ販売された蓄音機グラモフォン社HMV460で通称「ルミエール」です。

HMVとはイギリスのグラモフオン社の蓄音機で「ヒズ・マスターズ・ヴォイス」のことで、製作は1924年〜5年の1年間のみ販売され販売台数は1037台でした。 映画フィルムの研究で有名なフランス人のルイ・ルミエールが1908年に扇子型をしたダイアフラム振動板の特許を取得し、紙材を応用して金メッキを施した円形の扇子型振動板をそのままスピーカーとして応用した蓄音機です。

この動作原理は針が受けた振動をまっすぐ上へ竹の棒で伝えて振動板の中央を駆動していて、正に機械的構造の点で駆動する点駆動スピーカーとなっています。

動力はクランクハンドルでの手巻きでダブルスプリングを採用しており、回転数はガバナーによる自動調整でHMV特有の回転数表示機構を採用していて回転調整は楽に行えるようになっています。

収納は振動板左右にある黒い持ち手部分をつまんで振動板をターンテーブルと平行に寝かせて上蓋を閉じ、音楽を聴くときは上蓋を開けて針を取り付けた後に振動板の左右にある黒い持ち手部分をつまんで縦に起こしレコードの上に針を置きます。

振動板は蓄音機の心臓部分でもあり紙製なので破損しやすく取り扱いには細心の注意が必要なことと生産台数が少ないうえに取扱いが大変なのでこのルミエールは現存する台数は限られており入手が難しい蓄音機でもあります。

作動としては針先の振動を振動板中心にのびたシャフトを経由して直接扇子型振動板の中心に伝える構造で、あたかも通常の一般的なサウンドボックスを直径36pの大きなサウンドボックスにしたようなもので、直接サウンドボックスからの音を聴いているような状態になります。

引用 古典音響ギャラリー
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電話受話器 レプロデューサー

ベルの電話とグレイの電話の比較
電話の原理はベルとグレイによって争われながら最終的にベルの発明となりました。この本人たちが描いた図ですが、何やら色々と読めそうです。

そもそもグレイの図は丁寧にシッカリ書いてあり、特に受話器の構造は電磁コイルの前に振動板があり、それを拡大するホーンの図が書いてあり、いかにも動作しそうな図ですし、こちらの方が正統的な感じです。

これに反してベルの受話器はどうも振動板自体に電磁コイルを巻いてある風で、すなわち、振動板を二つの方向から動かそうとしている風です。とすると、後の時代の棒磁石受話器と、マグネチックスピーカーの両方の働きを想定している風です。これを動作させるのはかなり難しそうです。

この様に、これらの特許を申請した時点ではまだ通信の実用化までは出来ていなかったのですが、理論的なシステムとしての考え方は出来ているのでこれが特許になったのでしょう。それに、振動板の振動で針の深さが変わり抵抗値が変わる事でデータ化するマイクの構造も、実用になったのは全く異なる構造のものとなっているので、やはり、これは電話としてのシステムの特許なのでしょう。

又、ベルとグレイの間ではかなり政治的なものも絡んだ様ですが、そしてその後、実用になるには受話器に棒磁石を使い鉄製の振動板をタワミ振動で動作する構造にしたものでした。受話器の構造

この鉄製の振動板はエッジがフレームにしっかり固定接続されています。とすると、重量もあるから音が発生しずらいと思われるでしょうが、実は振動板の重さはほとんど振動に関与しないタワミ振動で動作するので、初期のグレイ風のレプロデューサーより良質な音を得る事が可能でした。タワミ振動をコントロールするには振動板のエッジを固定する必要があるのです。 →ループ接続振動発生システム

棒磁石の受話器も各メーカーで色々と工夫があり特に磁石と振動板の間隔の調整する必要があり、各社様々な構造があるようです。

特に電話の受話器やラジオや通信のヘッドフォンとして使われていましたが、音が小さいので様々なホーンを組み合わせて実用化されています。

そして、この受話器型の最終形で、振動鉄板に直接直径30センチほどのエッジがフリーの振動板がネジ止めされている、スピーカー風な、レプロデューサーACME K-1Aというのがあります。
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このスピーカーは後ろ側にも同じ振動板があり、それぞれのエッジは枠には接触していないで完全にフリーの形です。すなわち、振動板の中央でネジ止めされていて、当然、他の受話器と同じようにタワミ振動(骨電動に近い動きでありピストン運動ではない)で音を出す構造であり、少し見ただけでは、エジソンのピックアップの構造が理解不可能なのと同じように、不思議な構造です。おそらく磁石が二本有るのでマグネチックスピーカーの橋渡し的な位置のスピーカーなのかも知れませんが、ここまで来るにはさぞ様々な試行錯誤があったことが伺えます。
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マグネチックスピーカー

レプロデューサーの出力が小さいのを改善するのが、マグネチックスピーカーです。まだ蓄音機のサウンドボックスの方が音は良かったのですが、電気でサウンドボックスは動作しません。
マグネチックスピーカー

この、マグネチックスピーカーの構造動作原理は、エジソンのピックアップ、ACME REPRODUCER と並んでどうすればこのような構造に気が付くのかわからない程とても高い思想の産物です。

マグネチックスピーカーの動作原理マグネチックスピーカーの動作原理
U字磁石、ヨーク、電磁コイル、支板は一体化となるように固定されていて、平板状アーマチュアの中心の支点は支板の中央に半田で固定されています。もし電磁コイルに入力された信号で片方がNに磁化されると上下ヨークの隙間に平板形態のアーマチュアは挿入されているので、NとNで反発され、NとSで引き合い、アーマチュアの反対側も同様に動作するのでシーソーの原理でアーマチュアは支点で支えられて傾きます。

しかし、アーマチュアの中心部分は半田で固定されているのである程度の距離以上は動けないようになっていて、この結果上下ヨークの隙間でアーマチュアが入力信号に従って振動する事になります。
マグネチックスピーカーの構造
アーマチュアで発生した振動は振動伝達棒で点で接続された振動板へ伝わり音声が出る構造になっています。

基本的にはサウンドボックスを電化した構造と理解する事が出来、サウンドボックスと同じく点駆動スピーカーとなっています。
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ダイナミックスピーカー

戦後ハイファイというキーワードと共に登場したのがダイナミックスピーカーで、基本構造は現在までほとんど変化がありません。
ダイナミックスピーカーの構造

動作原理はマグネチックスピーカーとは異なり、ボビンに巻き付けられたコイルに流れる電流全てが、放射状に出ている磁力線をフレミングの左手の法則の人差し指の方向に横切るので、コイルに振動が発生する構造になっています。ダイナミックスピーカーの動作原理、フレミングの左手の法則

マグネチックスピーカーより性能は良いのですが、ボックスに設置して弱い低音を増強させる必要があり、その他解決すべき問題点があります。

画像引用→


詳しくは
オーディオシステムの問題点→
スピーカー動作原理の詳細→
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